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2007年6月23日 (土)

感染

感染 内容(「BOOK」データベースより)
ウィルス研究医・仲沢葉月は、ある晩、未来を嘱望されている外科医の夫・啓介と前妻との間の子が誘拐されたという連絡を受ける。幼子は焼死体で発見されるという最悪の事件となったにもかかわらず、啓介は女からの呼び出しに出かけていったきり音信不通。痛み戸惑う気持ちで夫の行方を捜すうち、彼女は続発する幼児誘拐殺人事件の意外な共通点と、医学界を揺るがす危険な策謀に辿り着く―。医学ジャーナリストが描く、迫真の医療サスペンス!第一回小学館文庫小説賞受賞作。

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大筋が主人公の落ち込み日記の印象。
何かを自発的に探ろうと前向きにはなるけれど、一個調べては落ち込み二個知っては哀しむのが見ていて痛ましい。主人公に同調すると怒りでだんだん疲れてきました。
立場も頭も悪くない女性が主人公ですが、格好良い女性になれる要素がふんだんにあるだけに物語の最後の方まで右往左往しながら一番要領の悪い選択を選んでいくのが見ていて歯がゆい思いです。
夫にあれだけ傷つけられながらも土壇場で夫が弱みを見せると今までの苦渋が嘘のように彼を加護し、信頼し始める図はいっそ哀れですらありました。
女性作者がこの手のおめでたい女性主人公を書いているのが少し残念です。

主人公の性格に絡む深いトラウマ的部分をストーリー中盤に差し掛かっていきなり(しかもサラッと数行だけ)書いてあったのに驚きました。
もっと最初の方に大仰に書かないと中盤に入って主人公の背景が薄いことに気づいたから仕方なく取って付けただけのエピソードのような印象しか持てません。

全体を通してこれだけ主人公に思い入れをして悔しく思いながらも読んでいたので、文章はとても読みやすいし小説として成り立った話しだと思うのですが、ひとえに主人公の性格と僕の気質が合わなかったんだろうな…と。

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2007年6月22日 (金)

魔術はささやく

魔術はささやく 内容(「BOOK」データベースより)
それぞれは社会面のありふれた記事だった。一人めはマンションの屋上から飛び降りた。二人めは地下鉄に飛び込んだ。そして三人めはタクシーの前に。何人たりとも相互の関連など想像し得べくもなく仕組まれた三つの死。さらに魔の手は四人めに伸びていた…。だが、逮捕されたタクシー運転手の甥、守は知らず知らず事件の真相に迫っていたのだった。日本推理サスペンス大賞受賞作。

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実は随分前に一度読んで、今回二度目の読破だったんですが、色々忘れていて曖昧だった部分や流して読んでいた部分を補えて面白かったです。
後の模倣犯に出てくる塚田真一少年はこの話の主役日下守をモチーフに作られたのだろうなと思いました。
めずらしく警察が全く出てこないミステリです。
ストーリーの骨組みが随分リアルなのに対してオチはサブリミナルと催眠術という凡そ一般的でないものを使っているのも珍しくて楽しく読めました。
この辺の大作で力をつけていき模倣犯へのベクトルが定まったのだなと考えると、この本や火車、理由などの印象がまた少し変わった気がします。

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淋しい狩人

淋しい狩人 内容(「BOOK」データベースより)
東京下町、荒川土手下にある小さな共同ビルの一階に店を構える田辺書店。店主のイワさんと孫の稔で切り盛りするごくありふれた古書店だ。しかし、この本屋を舞台に様々な事件が繰り広げられる。平凡なOLが電車の網棚から手にした本に挾まれていた名刺。父親の遺品の中から出てきた数百冊の同じ本。本をきっかけに起こる謎をイワさんと稔が解いていく。ブッキッシュな連作短編集。

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ミステリ小説の主人公がおじいちゃんとその孫という取り合わせ自体が非常にめずらしく、心温まるほのぼのストーリーの枠も充分に満たしている小説でした。
最後の方にいけば行くほど二人の心の距離が開いてしまい、最後にまた自然と戻ってくる(戻ってくる予感を残して終わる?)書き方は『今夜は眠れない』『夢にも思わない』この両シリーズの雅男と島崎を彷彿させられます。
おじいちゃんだからこその距離感で事件と対峙していくので、解かなければいけない謎は解き、解かなくていい謎は心の中にしまっておくスタンスがとても新鮮でした。
できれば続きを書いてほしい。その後が気になる一冊です。

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2007年6月21日 (木)

我らが隣人の犯罪

我らが隣人の犯罪 内容(「BOOK」データベースより)
僕は三田村誠。中学1年。父と母そして妹の智子の4人家族だ。僕たちは念願のタウンハウスに引越したのだが、隣家の女性が室内で飼っているスピッツ・ミリーの鳴き声に終日悩まされることになった。僕と智子は、家によく遊びに来る毅彦おじさんと組み、ミリーを“誘拐”したのだが…。表題作以下5篇収録。

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長編も短編も上手い宮部さん。相変わらず面白いです。
短編が5個も入っているとたいがいネガティブな話が1個ぐらいはあるものですが、この本は全編通してコミカルに読めました。
人工授精で産まれた少年が主人公の「この子誰の子」にしても、物悲しさや悲壮感は無く、根底に見えるのは希望です。
こういう話をサラッと重くすることなく書けてしまうのがこの作者の凄い所。

宮部作品は歴史物を除いたらそろそろ読みつくしてきた感があり、未読本の列に終わりが見えているのがなんだか寂しさすら感じます。

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神はサイコロを振らない

神はサイコロを振らない 内容(「BOOK」データベースより)
かつて、忽然と消息を絶った報和航空四〇二便YS‐11機が突如、羽田空港に帰還した。しかし六十八名の乗員乗客にとって、時計の針は十年前を指したまま…。戸惑いながらも再会を喜ぶ彼らと、その家族を待ち受けていた運命とは―。歳月を超えて実現した愛と奇跡の物語。

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ドラマを数回だけ見て結局最終回を観はぐれた為、小説で読んでみる気になった話でしたが、ドラマを念頭に置くと登場人物の名前以外もう全く違うんですね。
設定として少しづつリンクしてる部分もあるのですが、ぼくが一番気になった主人公(?)達の話が一番安易で面白くなかった気がします。
まず主人公の性別からして違うしなー…
登場人物が多すぎて書き手が手を広げすぎたまま立ち往生してる感も否めませんでした。ザッピングシステムは好きな方ですがこれは書き方がやや荒い気がします。
ドラマのEDが気になって本を読んだけど、あまりにキャラクターが違いすぎて改めてドラマのEDを観たくなりました。
題材はメチャクチャ面白そうなだけに残念…

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魔王

魔王 出版社 / 著者からの内容紹介
「小説の力」を証明する興奮と感動の新文学
不思議な力を身につけた男が大衆を扇動する政治家と対決する「魔王」と、静謐な感動をよぶ「呼吸」。別々の作品ながら対をなし、新しい文学世界を創造した傑作!

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実はこの小説と一つ前の死神の精度という小説は同時期に入手していて、どちらを先に読むか非常に迷った末に死神の方から読んだのですが、この選択がこんなに大当たりだと思いませんでした。
互換性としては死神の精度に出ていた死神が魔王の主人公を調査する…という非常に単純な絡み方をしているだけなのですが、この“死神”の性質がちゃんと本一冊を読んで理解したうえでないとえらく自分の中に残りそうな描かれ方だったんですよ。

魔王に出てくる兄弟はどことなく重力ピエロの兄弟と似ている気がします。そしてどちらも非常に清々しく仲のいい兄弟です。作者が描く男兄弟の理想図がこれに近い形なのかもしれません。
この話は謎が全然…本当に1個も解かれていない謎だらけの話なので、死神の精度みたいに他の伊坂作品にも登場している(もしくはこれからしてくる?)人がいるのかもしれない。それを期待しながらこの人の他の話を読んでいくのも楽しそうだなと思いました。

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死神の精度

死神の精度 内容(「MARC」データベースより)
「俺が仕事をするといつも降るんだ」 クールでちょっとズレてる死神が出会った6つの物語。音楽を愛する死神の前で繰り広げられる人間模様。『オール読物』等掲載を単行本化。

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ページも少なくかなりライトな気持ちで読める本でした。
と言っても伊坂氏の本で重い気持ちじゃないと読めない本はなかなか少ない気もしますが…。
死神の人間感の無さ具合とたまにとぼける感じがとてもコミカルなんだけど、人の死に対してはやっぱり哀しいぐらいドライでそのギャップに戸惑う事も暫し。
あと1話目に死ぬ予定だった人生に疲れた女性が最終話で歌姫になっていたり、4話目に出てきた主人公の想い人が最終話の主役だったりと僕の好きな原点回帰物だったのが嬉しかったです。
全体を通してぐっと読み込める話と言うよりはオムニバス形式で小話を楽しむ感じで良い時間つぶしになりました。

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2007年6月 1日 (金)

長い長い殺人

長い長い殺人 内容(「BOOK」データベースより)
金は天下のまわりもの。財布の中で現金は、きれいな金も汚ない金も、みな同じ顔をして収まっている。しかし、財布の気持ちになれば、話は別だ。持ち主の懐ろに入っている財布は、持ち主のすることなすことすべて知っているし、その中身の素性もお見通しである。刑事の財布、強請屋の財布、少年の財布、探偵の財布、目撃者の財布、死者の財布、証人の財布、犯人の財布等等―十個の財布が物語る持ち主の行動、現金の動きが、意表をついた重大事件をあぶりだす。

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財布という無機物を視点にしてここまで面白い物語が書けるのか!と脱帽しました。
最初10編あるのでバラバラのオムニバスかなと思ったんですが、一個の長い長い殺人(今考えたらタイトルを見た時点で気付くべきだった)を財布たちの目線で追った長編小説でした。
一組の男女が関わった殺人事件、死体の数は4つ。主たる登場人物の数は10名。財布の数もぴったり10個。
登場人物たち本人がこの物語を語っていないぶん財布たちがすこし自由の利かない第三者目線で物語を進めていくのですが、犯人や刑事などの心の中が全く見えないわその癖おこなった行動は逐一描かれているわで不気味さと後からくる納得が読んでいて凄く心地良かったです。
全体的に砕けていて単元ごとにサクッと読めるので、ミステリをあまり読んだ事が無い人にも楽しめる一冊だと思います。

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