伊坂幸太郎

2008年2月25日 (月)

チルドレン

チルドレン (講談社文庫 (い111-1)) 出版社/著者からの内容紹介
こういう奇跡もあるんじゃないか?
まっとうさの「力」は、まだ有効かもしれない。信じること、優しいこと、怒ること。それが報いられた瞬間の輝き。ばかばかしくて恰好よい、ファニーな「五つの奇跡」の物語。
吉川英治文学新人賞作家、会心の受賞第1作!
短編集のふりをした長編小説です。帯のどこかに“短編集”とあっても信じないでください。
伊坂幸太郎


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友達同士の仲。それもとりたて微妙で気をつかって、でも馬鹿を言えて気兼ねなくて気安くて、そんな間柄に掛け合う言葉の表現や、動物が居る空間を伝えるのが上手い。
短編集かと思いきや、最初の短編の登場人物の「陣内」を中心にした一つの長編でした。巻末の解説にあった著者の言葉を借りれば「短編集のふりをした長編小説」らしいです。
一見ジョークが効き過ぎていて言い回しがキツイ言葉も、ストーリーの中に溶け込むのが早く、決してチクリとさされることはありません。
安心して柔らかく本が読める事は今のモチベーションにピッタリ合っていた事も相まって、最後まで面白く読めました。

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2008年1月22日 (火)

ラッシュライフ

ラッシュライフ (新潮文庫) 内容(「BOOK」データベースより)
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場―。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。


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「一枚の騙し絵小説」

もんのすごい複雑な時間軸の話。でも整理すると意外と単純でした。
結局は421ページの佐々岡の話した内容そのままのシステムの小説だった。
ただ整理しないまま読んだほうが最後にどかんと楽しいです(笑)。楽しみ方を間違えた…

この話に出てくる物は、登場人物は勿論、街の風景や天気やポスター一枚、野良犬一匹まで本当によく作り込まれています。万物、あらゆる物に意味と役目がありました。
一見ぽいぽいと投げられているような登場物が最後に一本の太い筋として絡み合う図は壮観です。
ザッピングシステムを使ったゲームとしてコンシューマーで出してくれないかな。確実に買うのにな。ネタバレしてても欲しい。彼等の見聞きしたものを映像で臨場感たっぷりで感じたい。

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2007年11月 7日 (水)

砂漠

砂漠 出版社 / 著者からの内容紹介
麻雀、合コン、バイトetc……普通のキャンパスライフを送りながら、「その気になれば俺たちだって、何かできるんじゃないか」と考え、もがく5人の学生たち。社会という「砂漠」に巣立つ前の「オアシス」で、あっという間に過ぎゆく日々を送る若者群像を活写。日本全国の伊坂ファン待望、1年半ぶりの書き下ろし長編青春小説!

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大学生グループの楽しくて退屈でちょっと感動的な4年間の話。…が、伊坂マジックは偉大です。そんな4年間の話がめちゃめちゃ面白いんです。
鳥井の頭の悪そうな振る舞いに最初「ちょっとぐらい痛い目にあったほうがいい」くらいは思っていたのに、本気で痛い目に合いどん底まで落ち込んだ鳥井を見て切なくなり、彼の心が立ち直った時にはいっそじわりと涙まで滲んでしまいました。
伊坂作品は本当に凄い!惹き込まれる!
苛立ちも衝撃も安堵も感動も全て読む速度と一緒にやってくる作家にはなかなか出会えません。
本当に自分のテンポの合った作品に出会うとその場で子供のように一喜一憂してしまうし、そうやってひとしきり激高したりその後死ぬほど安心したりするのがやたらと心地いい。
今まで伊坂作品を読んできて全体的に感じた事は、主人公にわりと無個性な頭脳型を置いて、その周りの個性的な人物に翻弄されたり観察したり影響されたりするような所謂“チーム”型の話が抜群に上手いですね。
読んでいたらこっちまでその仲間に入ったような錯覚を起こすぐらい生き生きとした小説でした。
あとマージャンとボーリングがめちゃめちゃやりたくなります。
僕はドンジャラぐらいしかやったことがなかったので、マージャンのルールをあまり知らなくて今まで殆ど触った事がありませんでしたが、なんだか読んでて無性にやりたくなったのでハンゲームをインストールしてみました。人生初プレイ。(結果、ルールがやっぱり曖昧で全く勝てませんでしたが…)

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2007年9月23日 (日)

オーデュボンの祈り

オーデュボンの祈り (新潮文庫) 内容(「BOOK」データベースより)
コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作、待望の文庫化。

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「ある日どこか島の外から来た人間が島に無いものを置いていく」
この言葉を信じ続けている日比野は登場人物至上一番バカで純粋だと思う。そして読前と読後で一番印象が変わった人物です。端的に言うと好きになりました。
地味ですが日比野を不器用な形で見守る島の警察官小山田との関係が好きです。
本書は著者がこれでもかって程に詰め込んだ伏線が見事で、最後まで読んでようやく理解できる事ばかりでした。最後まで読んでも納得できない事もままあるけども、それが気にならないぐらいにこの世界観は見事です。
ミステリーと言うより現代小説のひとつとして読む方がしっくりくるのではないでしょうか。
デビュー作から「群集心理」と「全体を包む大いなる波」は伊坂作品の特徴だという事がよくわかりました。

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2007年6月21日 (木)

魔王

魔王 出版社 / 著者からの内容紹介
「小説の力」を証明する興奮と感動の新文学
不思議な力を身につけた男が大衆を扇動する政治家と対決する「魔王」と、静謐な感動をよぶ「呼吸」。別々の作品ながら対をなし、新しい文学世界を創造した傑作!

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実はこの小説と一つ前の死神の精度という小説は同時期に入手していて、どちらを先に読むか非常に迷った末に死神の方から読んだのですが、この選択がこんなに大当たりだと思いませんでした。
互換性としては死神の精度に出ていた死神が魔王の主人公を調査する…という非常に単純な絡み方をしているだけなのですが、この“死神”の性質がちゃんと本一冊を読んで理解したうえでないとえらく自分の中に残りそうな描かれ方だったんですよ。

魔王に出てくる兄弟はどことなく重力ピエロの兄弟と似ている気がします。そしてどちらも非常に清々しく仲のいい兄弟です。作者が描く男兄弟の理想図がこれに近い形なのかもしれません。
この話は謎が全然…本当に1個も解かれていない謎だらけの話なので、死神の精度みたいに他の伊坂作品にも登場している(もしくはこれからしてくる?)人がいるのかもしれない。それを期待しながらこの人の他の話を読んでいくのも楽しそうだなと思いました。

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死神の精度

死神の精度 内容(「MARC」データベースより)
「俺が仕事をするといつも降るんだ」 クールでちょっとズレてる死神が出会った6つの物語。音楽を愛する死神の前で繰り広げられる人間模様。『オール読物』等掲載を単行本化。

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ページも少なくかなりライトな気持ちで読める本でした。
と言っても伊坂氏の本で重い気持ちじゃないと読めない本はなかなか少ない気もしますが…。
死神の人間感の無さ具合とたまにとぼける感じがとてもコミカルなんだけど、人の死に対してはやっぱり哀しいぐらいドライでそのギャップに戸惑う事も暫し。
あと1話目に死ぬ予定だった人生に疲れた女性が最終話で歌姫になっていたり、4話目に出てきた主人公の想い人が最終話の主役だったりと僕の好きな原点回帰物だったのが嬉しかったです。
全体を通してぐっと読み込める話と言うよりはオムニバス形式で小話を楽しむ感じで良い時間つぶしになりました。

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2007年5月17日 (木)

終末のフール

終末のフール 出版社 / 著者からの内容紹介
あと3年で世界が終わるなら、何をしますか。
2xxx年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中、仙台市北部の団地に住む人々は、いかにそれぞれの人生を送るのか? 傑作連作短編集。

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初めて図書館で借りて読んで以来、この1年間に合計3回読みました。
普段あんまり小説を読み直すとかはしないんですが、この本はふとした時に読みたくなります。
あと3年で人類が滅亡する世界で人々は何をするか。
混沌とした世の中は終わり気の小さい人や不運な人はだいたい死に絶えた後の話です。
現実を受け入れて3年間をどう生きるか模索しながら生きている人たちに焦点を絞った8作品。
重力ピエロの時にも思いましたが、伊坂氏の話には本当に納得したり、涙が出そうになるほど胸にくるフレーズが沢山出てきます。
なんかちょっと毎日が退屈だなぁ…って思った時に読むと一番ガツンとくるんじゃないかな。僕もまたそういう時に読み直そう。

関係あるようで無いような事だけど終末の過ごし方を久しぶりにやりたくなりました。

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重力ピエロ

重力ピエロ 内容(「Amazon.co.jp」データベースより)
   半分しか血のつながりがない「私」と、弟の「春」。春は、私の母親がレイプされたときに身ごもった子である。ある日、出生前診断などの遺伝子技術を扱う私の勤め先が、何者かに放火される。町のあちこちに描かれた落書き消しを専門に請け負っている春は、現場近くに、スプレーによるグラフィティーアートが残されていることに気づく。連続放火事件と謎の落書き、レイプという憎むべき犯罪を肯定しなければ、自分が存在しない、という矛盾を抱えた春の危うさは、やがて交錯し…。

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遺伝子DNAや二重螺旋が話の核になっていて少し複雑な感じがするけども、導入も入りやすく主人公や春、二人の母親、父親、春を追いかける整形美人のストーカーなど登場人物も現実に居なさそうで居そうな微妙なバランスが非常に魅力的でした。
伊坂さんは今の所ハズレがないなぁ。軽く読めるくせに読後もずっしりと心に残るのが凄い。文体がお洒落でユーモアな所も魅力です。
「深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」この春の台詞にはとても納得させられました。

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