津原泰水

2007年10月26日 (金)

ルピナス探偵団の当惑

ルピナス探偵団の当惑 (ミステリー・リーグ) 内容(「BOOK」データベースより)
「そうだ、検視の結果なんだけど」と姉(警察官)は言い、「いい。聞きたくない。いま食べてるし」と私(女高生)はかえすのだが、「じゃあ聞かないで。勝手に喋るから」そうして事件に巻き込まれ(押しつけられ)てゆく私たち。どうして殺人を犯した直後に被害者の残したピザなんかを食べていったのだろうか、どうして血文字のダイイング・メッセージ(らしい)はわざわざ鏡文字になっていたのか、そしてどうして死体から腕だけを無理して盗んだのか―。才人津原泰水が本格ミステリーの粋を凝らした傑作。

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津原さんが少女小説家だった時代に書いた作品に1編を足して出来上がった本だそうです。
少女小説を書いていた事は知っていたのですが、過去読んできた津原作品から少女向けの小説というのが壮絶に思い浮かばなくて全然ピンとこなかったのですが、なるほどこんな感じか。
文章の密度は1/2ぐらいになってるんですが、目の付け所というか文体は全く持って変わらずですね。これはこの時代に書いていた作品も俄然気になってきました。というぐらい面白かったです。
探偵役が主人公なのかと思いきや、途中から主人公が思いをよせる男の子に代わっていったりと、ミステリ要素としてはなかなかにトリッキーな部分も多いですが、基盤が少女小説ならば納得。
会話の掛け合いもとてもリズミカルで、全編通して恋愛が主軸にあるはずなのにびっくりするぐらい色っぽい話にならないのも面白いです。
もしこの話が文庫でたくさん出ていたら、図書館とかで探して一から追っかけたくなりました。

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2007年10月 6日 (土)

少年トレチア

少年トレチア 出版社/著者からの内容紹介
都市のまどろみは怪物を育む。
みんなが云う。
悪いのはトレチア。殺したのはトレチア。

<欲望と邪意を見つめる熱く暗い傑作>

「キジツダ」謎の少年が囁く死の呪文とは?
新興住宅地で次々おこる殺人事件。目撃された学帽と白い開襟シャツの少年は何者か。都市伝説を通して“恐るべき子供たち”の真実を捉え、未来を予見するホラー!

楳原崇(うめはらたかし)――うしろ暗い少年期を隠した学生。
佐久間七与(さくまななよ)――ニュータウンを撮り続ける女。
蠣崎旺児(かきざきおうじ)――夜ごとダウジングする漫画家。
新宅晟(しんたくあきら)――難病とともに生きる邪悪なこども。

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都市伝説とホラーとミステリを足してミステリ要素にちょっとだけ色をつけたような感じの作品でした。
津原さんの文体はやはりとても美しいのですが、何せ長くて説明的文章が多い中盤はちょっとダレる…
全体的には面白いですし、睡眠の前に読破してそのまま眠ったら悪夢をみました(笑)ぐらい直後の精神状態に影響を与える作品です。
公園もあり池もありショッピングモールもあり、病院もあるような隔離空間、「サテライト」という巨大高層マンションがこの話の舞台なのですが、その辺はアクアポリスQの世界観に近いと感じました。独特の閉塞感のある世界が上手く表現されています。
津原泰水氏の書く小説は話が収集して終息するのではなく、そのイメージが広がったまま消えない所に良さがあると思う。

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2007年10月 3日 (水)

ピカルディの薔薇

ピカルディの薔薇 内容(「BOOK」データベースより)
頑迷な男を襲う白昼夢。(「夕化粧」)人形作家の恐るべき新作。(「ピカルディの薔薇」)鳥を彩る伝説の真相。(「籠中花」)饒舌に語られる凄絶な食。(「フルーツ白玉」)稲生武太夫伝説への硬質なるオマージュ。(「夢三十夜」)未来を覗ける切符の対価(「甘い風」)猿渡の祖父が見た彼の幻の都。(「新京異聞」)江戸川乱歩、中井英夫の直系が紡ぐ、倦怠と残酷の悲喜劇。

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「蘆屋家の崩壊 」が大学時代に友人から借りて読んで、久しぶりに読み返したくなるほど印象深かった作品だったのですが、「ピカルディの薔薇」はその登場人物である猿渡と伯爵の二人があいまみえる続編でした。
この本に関して全くのノー知識で、津原さんの名前だけで読み始めたのでこの嬉しい出会いに相当ビックリしました。
相変わらずこの方の書く文章は美しいです。詩的で…とか情緒があってどうとかそういうのは全然詳しくない自分ですが、難そうに見えてそうでなく、ユーモアとセンスの良さが軽妙洒脱に描かれているのが凄い。
魔を秘めた幻想的な雰囲気が好きな人にはたまらない一品です。

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2007年8月 4日 (土)

アクアポリスQ

アクアポリスQ 出版社 / 著者からの内容紹介
水没都市Q市の沖合いに浮かぶ人工島「アクアポリス」。この水上都市が建造された背後には、国家規模の陰謀を封じる仕掛けが隠されていた。Q市壊滅のため、伝説の牛鬼を召還しようとする政府の要人たち。その計画を阻止するべく、現われた女設計士「J」、自分の故郷を守ろうと立ち上がる少年「タイチ」。異能の鬼才・津原泰水が近未来を舞台にはじめて挑む本格ビルドゥングスロマン。

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敵の形状や話の持っていき方がエヴァちっく。
ただエヴァで言うところのシンジ役の主人公タイチがめったやたらにポジティブシンキングで非常に好感が持てました。
これぐらい主役が前に進むパワーのある子なら、暗くて人の死に合いの多い話でも続きを読む元気がわくんだけどな。
あと津原さんらしく字面にゆとりがなくて説明の極端に少ない描写です。
それでも読む人を惹き付けるんだからこれはもう天性だ。
専門用語(アクアポリス用語)が多くて慣れるまではちょっと読み辛さも…。

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2007年7月19日 (木)

蘆屋家の崩壊

蘆屋家の崩壊 内容(「BOOK」データベースより)
定職を持たない猿渡と小説家の伯爵は豆腐好きが縁で結びついたコンビ。伯爵の取材に運転手として同行する先々でなぜか遭遇する、身の毛もよだつ怪奇現象。飄々としたふたり旅は、小浜で蘆屋道満の末裔たちに、富士市では赤い巨人の噂に、榛名山では謎めいた狛犬に出迎えられ、やがて、日常世界が幻想地獄に変貌する―。鬼才が彩る妖しの幻想怪奇短篇集

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大学時代に本好きの友人から「この本めちゃくちゃ面白いから読んどいた方がいいよ」と言われて借りて読みました。それから数年後の今、本屋でこの本を見つけた時に確かに読んだ記憶とめちゃくちゃ面白かった記憶はあったのですが、内容が全く思い出せないので改めて自分で買いなおして読み直してみました。

めちゃくちゃ面白かったです。

夏のこの季節にピッタリのちょいとした怪奇話。ホラーというより日本の妖怪や魑魅魍魎系が下敷きになっているので怪奇という言葉がピッタリです。
物凄く安直な例えで申し訳ないんですが、京極夏彦を超軽妙にした感じ。…ん、これはどちらのファンに謝ればいいんだ?両方か。
主人公猿渡の一人称で始る話ですが、彼の性格がちゃらんぽらんでずぼらで喋る言葉がいちいち的を得ているので、語り口を読んでいるだけでも相当愉快です。
この登場人物達を使った続きの本があるのなら間違いなく次も読みたくなるクオリティです。

なんでこの作家さんの事をもうちょっと前に思い出さなかったんだろう。
後で図書館行って他の本も借りてこよう。

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